へそ曲がり編集者の独り言 : 恐竜の骨のたった一片から、巨大な恐竜の生きた姿を推測するのは科学であり同時に大きなロマンである。別の同種恐竜のもう一片の骨が発見されれば、その夢は更に膨らみ現実に近づく。歴史にも同様のロマンがある。勘助の「骨」と思われたものは「甲陽軍艦」(軍師勘助)であり、ほぼ確実なもう「一片」は市川文書(軍使管助)のみである。歴史は考古学同様の科学的推測手法はない。ロマンを求める我々には隔靴掻痒である。そこで、その要望に応えてくれるものが、歴史小説であり、井上靖は勘助像の創造に応えてくれている。文字を読むのが不得手な編集子などには、TVが映像・音声でロマンをかなえてくれる。小説やTVで歴史的ロマンの創造を見聞きするのは実に面白い。しかし創造と史実の混同が広まり始めると、真面目なロマンチストには迷惑な騒音となる。 |