母  校  に  帰  る
15回生 大河原 晧視

母校卒業30年として同窓会総会のお世話をさせて頂いてから、はや10年の歳月が流れ
てしまったのかと、今さらながらに時の流れの速さに驚かされます。この10年間に自分自
身の生活に何があったのか振り返ってみますと、奉職する場として5回の異動を繰り返し
て来たことになります。それぞれの職場で、同僚に恵まれながらその時々の課題に取り組
んで来たつもりではありますが、「良い仕事」をしてきたかどうかということになりますと
いささか不安も過ります。
五つの職場の中で、平成9年度から平成11年度まで母校で過ごさせて頂いた三年間は教
職に身を奉じた者として至福の時間でありました。校長として取り組むべき学校経営や教
育活動の展開は勿諭のことですが、学校の内外総力を挙げて取り組んだ事業として創立80
周年記念事業がありました。山本和明会長様を始めとする同窓会顧問・役員の方々・会員
の皆様、創立80周年記念事業実行委員会委員長青木徳生様を始めとする実行委員会の皆様
方には、本当にお世話になりました。記念事業の構想を練り上げること、構想を具現化す
る組織を確立すること、事業遂行に必要な財源を確保することなど、全くゼロからの出発
であった訳ですから、まさに母校に寄せる思いが通い合い、思いが具体的な形となり、そ
の形を通して同窓の思いを在籍する後輩たちに託すことが出来たのだと思います。私自身
は、平12年4月思いもかけず県総合教育センターに転出してしまいましたので、この事
業を成し遂げて頂いたのは井上郁代校長、山本和明同窓会長、青木徳生実行委員長のお力
であったと深く感謝申し上げます。
また、10数年前に総会のお世話をさせて頂くことになって再会を遂げた15回同期の仲
間たちにも、本当に心から感謝の気持ちを捧げさせて頂きたいと思います。自分一人では
何もする力のない私を、時に励まし、時に押し出し、時に包み込み、常に元気の源を注ぎ
込んでくれました。忙しさにかまけて不義理ばかりを積み重ねているのに、そのことさえ
も許してくれている仲間たち、本当に有り難う。
さて、平成14年を象徴する漢字に「帰」が選ばれました。個人的には、感慨深い思いを
抱きながらこの記事を読みました。新世紀が始まり、政治や経済の世界では構造改革が唱
えられ、教育の世界でも矢継ぎ早に改革が進められています。が、正直なところ「これで
よいのだろうか、本当にそうしていくのだろうか」という気持ちを拭いさることが出来な
いのも事実です。風が吹けば梢は揺れるし、技が撓めば幹にも振動が伝わり、根も浮き上
がってくるものがあるかも知れない。やがて、木そのものが枯死してしまったらどうなる
のだろうという、そんな思いが去来します、こうした思いを抱いているところに「帰」が
選ばれたということになります。
「帰」という文字は、語源的に考えてみると「回り回って元の場所にもどる、別の所か
ら本来在るべき所にもどる」というのが本来の意味であることが分かります。日常会話で
も、家から何処かに出掛ける時には「行ってらっしゃい」と言いますし、戻って来た時に
は「お帰りなさい」と言うことからも、このことは理解出来ると思います。「行く」と表
すか、「帰る」と表すか、それはその人がどこに自分の根源を意議しているかということと
密接に関わる問題であると思われます。
平成15年5月18日、私達は、25回生を中心とする皆様方のお導きにより母校国府高等
学校に「帰る」機会を作って頂きました。もう間もなく現役としての第一線を退くことと
なる現実の我が身と、未だ夢の中に生きていた青春の我が身とを重ね合わせつつ、最後に
帰っていく自分自身の在り処を確かめたいと思っています。   (H14.12.20記)

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